夜汽車の女

喧噪の都心をはなれた閑静な高級住宅街に考古学者、水城元の家がある。 水城家には、裕美と冴子という姉妹がいた。 姉の裕美は父に似て思慮深く、妹の冴子は行動派で、姉とはまるで逆の性格であった。 二人は早くに母に死に別れていたため、裕美が冴子の母がわりをしていた。そのためか異常なほど二人の姉妹愛は深かった。 裕美に父の大学の研究室で働く有川との結婚話がもち上がり、裕美は父の言葉にしたがい、彼といっしょになる事に嫌ではなかったが、冴子は裕美が有川に抱かれることがたまらなく、何かにつけて有川に反対し、二人を引き離そうとしていた。