濡れた荒野を走れ

ある地方都市―― ベトナム救済募金が数人の覆面グループに強奪された。グループは犯行が終るや、何くわぬ顔で警察官に早変り、事故現場に急行、証拠隠滅を計った。 まんまと数百万円の募金をものにした主犯の原田、加藤らは、署長から、精神病院に入院中の中村が放火して脱走したことを知らされた。 中村は記憶喪失におちいり、変態行為をする元警官だった。しかし原田らは中村が組織から逃げ出すために芝居をうっていると信んじていた。原田は中村の自宅に急行した。中村が妻の恭子の元へ立ち寄っているとにらんだのだ。案の定、中村らしい不審な電話が入ってきた――。 ただちに附近一帯に非常線が張られた。そんな時、駅の公衆便所に女の絞殺死体が発見された。原田らがかけつけると、中村らしい男が、国体遠征の女高生グループにまぎれ、列車で逃亡しようとしていた。原田と加藤はパトカーで列車を追った。 列車はいつしか県境を越えていた。車内には女高生グループの一人、清水まりこと中村だけになっていた。まりこのはちきれそうな若々しい肉体を、中村はつい抱きしめてしまっていた。