信州シコシコ節 芸者VSお座敷ストリッパー

信濃路の春はまだ浅く、やっと咲いた桃の花にも似たストリッパー達が信州・上山田温泉の入口・戸倉駅のホームに降り立った。宝京子一座である。それを迎えるはこの町の中年御三家・焼跡派を名乗る医者、農協、副団の三人組に上山田町消防団と染め抜いたハッピ姿の楽隊。その音は小学校のブラスバンドより下手くそながら、一同まじめに演奏している。 三人組のお目当ては、座長の宝京子でなく一番最後にトランクを二つ持って、よたよたしながらみんなの後を追う踊り子、ベッキー・メロンちゃん。ふっくらとしたホッペにつぶらな瞳、まだおさげ髪が似合うようななぜか素朴なベッキー・メロンちゃん。三人組、ベッキーの姿を見つけると、あわてて駆け寄り、公平にチュー、チュー、チューとキスをもらってにんまり。この三人、「ベッキーを守る会」を作って、互いに抜けがけなしの会則でたいした熱のいれよう。それを横目でじっくり見ていたのは通りがかりのサギ師パイナップル、何かひらめいたようにうす笑い。