少年王が乗った御輿が孔徳里の峠にさしかかった。
押しかけた民衆が沿道に人の波を作った。
厳かな行列を衛兵と宣伝官が先導し、槍と剣で武装した200人あまりの衛兵が御輿の前後を厳重に護衛していた。
沿道の民衆の中には女子供も含まれていた。
その中に、黄色いチョゴリに南瓜色の木綿のチマを履いた13歳の少女が、御輿の上で鷹揚に座っている少年王を見つめていた。
少女の名前はミン(閔)・ヨフン。
この少女こそ、後に少年王、すなわち高宗の王妃に選ばれ、舅である興宣大院君との血で血を洗う戦いを繰り広げた末に勝利し、高宗の寵愛を受けて高宗の影から政治を自在に操り、日本によって悲惨な死を遂げる"鉄の女"こと明成皇后である…。