愛する人に想いを残したまま、この世を去ってしまったら…。憧れのマドンナを見守り、熱い想いを告げたいという一心で、この世を去った後に“福耳”をもつ29歳のフリーター男にとり憑いた一人のジイさん。この若い男高志も、別の女性を想って働くことになった矢先に、そんな老人の幽霊にとり憑かれるという災難に遭う!それぞれの恋のゆくえは!? そして一人の男の身体に同居する,世代も考え方も違う二つの人格はどうやって共存するのか!?
舞台は浅草にあるシニア向けマンション・東京パティオ。第二の人生を生き生きと過ごす型破りなお年寄りたちの中にポンと放りこまれた、ひとりのフリーター男。その場限りの人生を過ごしてきた彼、高志が、もう一つの人格にとり憑かれるという奇想天外な経験を通じて、自分らしい生き方、そして本当の恋を見つけ出す。人生でやり残したことをしてみたり、恋をしたりする老人たちを見て、元気づけられ、新しい一歩を踏み出す勇気を得る高志。その姿を通して、死をも乗り越える“想い”と“出会い”をユーモラスに、ファンタジックに描いていく。
監督は本作が劇場用映画初監督となる瀧川治水。テレビ版「リング」や「アナザヘヴン eclipse」 などホラー、ファンタジー作品で頭角をあらわしてきた実力派。脚本は、今村昌平監督の『うなぎ』『赤い橋の下のぬるい水』の冨川元文。年をとってもなお、恋愛をすることの幸福さを生き生きと描き出している。また撮影に『Shall we ダンス?』『陰陽師』の栢野直樹、視覚効果に、『ホワイトアウト』『クロスファイア』の松本肇などの精鋭スタッフが集結し、今までの日本映画にないファンタスティックな映像感覚あふれる大人のコメディが誕生した。
出演陣も強力。『GO』や『ピンポン』などの脚本で日本映画界に新風を吹き込んだ劇団・大人計画のクドカンこと宮藤官九郎が、初の主演映画に挑戦。映画『13階段』に引き続き、演技者としてのあふれる才能を発揮。ジイさんにとり憑かれ『ファイト・クラブ』のエドワード・ノートンさながらに“自分で自分を殴る演技”は必見!
彼にとり憑く幽霊役に、「北の国から」の黒板五郎役や映画『学校』『みんなのいえ』で存在感のある演技を見せてきた田中邦衛。この二人が鏡を隔てて同じ動きをするユーモラスなシーンは息もピッタリで、重要なみどころのひとつ。
二人のマドンナに、朝の連続テレビ小説「さくら」のヒロイン高野志穂と、昭和の巨匠達と数々の名画を作り上げ、今もなお美しい司葉子。高野は「さくら」出演後、初の映画となる作品。二枚目スターとして活躍し、故伊丹十三監督作品の常連・宝田明が麗しい女装姿を披露し、千石規子、多々良純、坂上二郎、谷啓、弓恵子、横山通乃など日本映画の至宝である名優たちが、滋味あふれる、素晴らしい演技を見せている。