なんのとりえもない男が、一匹の捨て犬と出会う。
一緒に住んでいた彼女が、家族の看病で実家に帰るのを機に、彼は住む所を失くしてしまっていた。
同じような境遇の一人と一匹は、行き場もなく途方に暮れてしまう。
そんな時、彼は「セラピードッグ」のことを知る。
そして彼は、家族の看病にかかりきりの彼女のために、この犬を育てて贈ることを思いつく―――。
空前のペットブームとよばれる現在、犬や猫たち動物は、人間たちにとって心身を癒してくれる大切な存在である。しかし心ない人々によって捨てられる動物たちも少なくはない。
「セラピードッグ」とは、動物との触れ合いを体のリハビリや心のケアに役立てようという、動物介在療法(アニマルアシステッドセラピー)に活躍する犬のことである。犬たちと接しているうちに、身体機能が回復したり、痴呆症が改善するなどの成果が見られる。本作にも特別出演しているブルースシンガーの大木トオル氏は、1970年代よりアメリカでこの活動を進め、日本での普及をライフワークとしてきた。代表を務める国際セラピードッグ協会では、日米で現在150匹もの犬を育てている。その犬たちの殆どが、一旦は人に捨てられ助けられた捨て犬たちだという。セラピードッグとして育てられることで再び生きるチャンスを与えられた犬たちなのだ。
『犬と歩けば チロリとタムラ』は、どんなに頼りなく見える人間や犬たちでも、誰かの力になることが出来るという、大切なことを教えてくれる。実際に本作に出演のチロリやタムラ(実際の名前はピース)は、セラピードッグとして活躍している犬たちである。その生き生きとした表情は、タレントとして訓練された犬たちでは決して表現することができないものである。