『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が第95回アカデミー賞で7部門を受賞し話題の映画スタジオA24製作の最新作。
夢見る少女はいかにして無慈悲かつ凶暴なシリアルキラーへと変貌していくのか―?
本作は、2022年に公開され高く評価された『X エックス』に登場する老婆パールの若かりし頃を描いた続編であり、『X エックス』の前日譚にあたる。現在製作中の完結編『MaXXXine(原題)』とあわせA24初の三部作としても注目されており、世界の映画祭を席巻。第79回ベネチア国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門、第47回トロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門に正式出品され、その悪魔的(デモニッシュ)な魅力で世界中を熱狂させた。マーティン・スコセッシ監督も「タイ・ウエスト監督の映画には、最近では珍しく、映画への純粋で混じりっ気のない愛に満ちたエネルギーがある」と絶賛している。
監督・脚本は『X エックス』に続けてタイ・ウエストが担当。1950年代のミュージカルやメロドラマからインスピレーションを受け、極彩色のテクニカラーを使用してダークで現実的な物語を描いており、パールの不安定な心理状態と二面性を見事に表現している。前作に続き、様々な古典映画へのオマージュが盛り込まれており、抑圧的な家族との関係、世界的なパンデミック(スペイン風邪)や第一次世界大戦下という環境の中で追い詰められていくパールの姿は、現代社会に通ずる部分も多く、批評性に富んだ作品を作り上げた。
主演は『X エックス』で主人公のマキシーンと最高齢のシリアルキラー・パールの二役を演じたミア・ゴス。本作でも若かりし頃のパールを演じ、脚本とエグゼクティブ・プロデューサーとしても参加している。ラース・フォン・トリアー監督『ニンフォマニアック』(13)、ルカ・グァダニーノ監督『サスペリア』(18)、『EMMA エマ』(20)などに出演し着実にキャリアを積んできたミア・ゴスが、圧倒的な人物造形で、シリアルキラー・パールの複雑なキャラクターを余すところなく体現している。