2019年アカデミー賞にノミネートされた緊迫感あふれるワンカットの短編作品を冒頭に〈その先〉を描く。我が子をなくした失意から立ち直り、新たな一歩を踏み出そうとする一人の女性の希望と再生の旅。
本作は、『ゴッド・セイブ・アスマドリード連続老女強姦殺人事件』(2016)で高い評価を受けたスペインの新鋭ロドリゴ・ソロゴイェン監督の5作目の長編映画。2017年に製作した約18分の短編映画「Madre」をベースに、幼い息子を失ったひとりの女性の希望と再生の旅路を描く。短編映画「Madre」は、第91回アカデミー賞(R)短編実写映画賞にノミネートされたほか、世界各国の映画祭で50以上もの賞を受賞。本作『おもかげ』では、その緊迫感あふれるワンシーンの短編を映画のオープニングシーンとして採用し、息子を失った女性エレナの〈その先〉の物語を描いていく。『おもかげ』は2019年の第76回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門に選出され、主人公エレナを演じたマルタ・ニエトが女優賞を受賞したほか、スペインで4つもの主演女優賞を獲得。エレナの息子の面影をまとう少年ジャンを、『マーヴィン、あるいは素晴らしい教育』(2017)のジュール・ポリエが、エレナの理解者であろうとする恋人ヨセバを、『ローマ法王になる日まで』(2015)のアレックス・ブレンデミュールが演じている。『おもかげ』は事件の解決という期待されがちな結末にとどめず、痛みと共に生き、暗闇から光へ、死から生へ、罪悪感から赦しへ、そして恐怖から愛へと、少しずつ歩み始める、エレナの再生の旅といえる。