吉田恵輔が監督・脚本を務めた渾身の一作に実力派キャストが集結
監督・脚本を務めるのは、『ヒメアノ~ル』16や『犬猿』18などリアリティ溢れる描写で人間の光と影を表現し続け、映画ファンを魅了してきた吉田恵輔。『純喫茶磯辺』08『さんかく』10)『麦子さんと』13)など数々のオリジナル作品を世に送り出してきた吉田が、中学生時代から30年以上続けてきたボクシングを題材に、キャリアを更新する最高傑作を生み出した。長い構想期間を経て、自ら脚本を書き上げた本作では、挑戦者を象徴する”ブルーコーナー”で戦い続ける者たちの生き様を描きだす。
主演を務めるのは、日本アカデミー賞優秀主演男優賞など多くの賞を獲得し、演技派俳優として確固たる地位を築く松山ケンイチ。吉田監督からいち早くオファーを受け、脚本に惚れ込んだ松山は約2年もの間じっくりと役作りに挑み、情熱はあっても才能がない、試合に勝てない主人公・瓜田を熱演。才能と強さを合わせ持つ瓜田の後輩・小川を東出昌大が、モテるために始めたボクシングにのめり込んでいく新人・楢崎を柄本時生が演じる。『聖の青春』(以来5年ぶりの共演となる3人の、息の合った掛け合いも見どころのひとつ。また彼らの挑戦を見守る千佳役は、吉田監督作品への出演を熱望した木村文乃。瓜田の初恋の人でありながら、今は小川の婚約者という二人の間で揺れるヒロインを演じる。この4人の実力派キャストが魅せるアンサンブルは、キャリア最高の演技と言っても過言ではない。
約束された成功なんてない。それでも前に進み続ける、静かに熱い若者たちの物語「流した涙や汗、すべての報われなかった努力に花束を渡したい気持ちで作った」。ボクシング人生30年の中で監督が見続けてきた様々な人物から着想を得た本作で描いたのは、結果にかかわらず努力を尽くす者たちの美しい姿。どんな困難が立ちはだかっても、情熱を絶やさず、何度でも立ち上がる男たちが観客の胸を熱くする。
主人公の瓜田は、誰よりも努力し情熱を注ぐが、負け続き。一方、後輩の小川は生まれもった才能とセンスで、チャンピオンの座を掴む直前。彼らの挑戦を見守るのは、瓜田の初恋の人で、今は小川の婚約者の千佳。すべてを掴んだ小川を瓜田は羨むが、小川に脳の障害が顕れ、彼らの関係が変わり始める。平凡と非凡、憧れと嫉妬、友情と恋。相反する想いが混じり合う3人の関係が切なさを誘い、理想と現実に悩みながら前に進む姿が心を揺さぶる。
一つのことを追求する苦しみだけではなく、好きな事に没頭する楽しさや喜びも表現されている。不純な理由でボクシングを始める楢崎が、魅力を見つけ次第に夢中になっていく姿が、一服の清涼剤として作用する。境遇の異なる4人の登場人物たちに、誰しもが自分と重なる部分を見つけることができるのではないだろうか。ブルー、それは青春の色、挑戦者の色。どれだけ努力しても、どれだけ才能があっても、約束された成功なんてない。それでも前に進む姿が胸を打つ、静かに熱い若者たちの物語。