神々の深き欲望
その一作一作が常に話題を提供、いまや自他共に許す日本映画のパイオニア監督、今村昌平がデビュー以来十年目十作目の記念すべき大作として全精魂を叩き込んだ画期的映画。 神話的伝統を今も受…
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本編
神々の深き欲望
- 174分
3日間 440 pt 〜
”むかしむかしのそのむかし/クラゲの海にやって来た/あにというもうとの神様の/島を造ったものがたり/島のはじめのものがたり/
今日もクラゲ島の創生記を、島人のいざり、里徳里が海辺に近いガジュマルの大樹の下で半裸の子供たちを前にして蛇皮線で弾き語っていた。
珊瑚礁の海、澄みきった空、輝くばかりの強烈な太陽、真紅に咲き乱れるデイゴや仏桑華、そしてパインやバナナ、パパイヤ、アダンなど亜熱帯植物が年中青々とおいしげる南海の孤島――クラゲ島。
この島は今から二十余年前、四昼夜にわたる大暴風に襲われ、津波にみまわれた。神への畏敬と深い信仰を持つ島人たちは嵐がその牙をおさめた時、自分たちが額に汗して耕し神への供物を捧げる稲穂の神の田園に赤い赤い真赤な巨岩が屹立しているのを発見した。島人たちは怖れおののいた。そしてこの凶事はどうして起こったのかを明けても暮れても詮議し女と呼ばれるノロたちも、そそり立つ絶壁の前で神に祈りつづけた。そのころ、太根吉が兵隊から帰ってきてぶらぶらしていたが、彼の妹ウマとの関係が怪しいという噂がたっていた。区長の立場にある竜立元は、さっそくこの噂をききつけ、根吉を鎖でつなぎこの赤い巨岩を、穴を掘って始末するように命じた。根吉はその日より二十余年間永々と穴を掘ることになった。根吉の息子、亀太郎は、そうした父の存在で同年輩の若い青年たちから疎外されていた。しかも亀太郎には妹トリ子が精薄で男好きのため既に亀太郎とは関係があるものとみられていた。そんな島の空気が亀太郎には耐えられなかった。なんとかこの島から脱出して、電気のある、電車のある、文明のあるところへ行きたいという希いを持ち続けていた。
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