本作は、東京藝大修了作品『しんしんしん』(11)、ndjc2018『サヨナラ家族』(19)などを手掛けた眞田康平監督が、長年温めてきた企画をカタチにした待望の長編第二作。再び原発事故が起こってしまった地方を舞台に、金と格差と暴力の中で尊厳を踏みにじられ、行き場もなく明日も見えない人々の、そのやり場のない心情と果たされない儚い想いをありありと映し出した群像劇。実際に原発の隣町で育った監督が、ありえたかもしれない未来を通して、人間の愚かさの中に僅かな救いや切なさを描き、居場所を探す全ての人々へ向けてこの映画を完成させた。
主演に、眞田組には欠かせない存在であり、瀬々敬久監督作品をはじめ多数の映画や舞台に出演、自身で劇団「狼少年」を主宰する奥津裕也を迎え、中村有、黒須杏樹の3人を中心に総勢800名近くのオーディションから選ばれた実力派キャストが脇を固めた。東北・仙台をロケ地として切り取られたこの映画は、地方に住む人々の想いを重ねながら、眞田康平の丁寧で繊細な視線に促され、緩やかに、物語へと沈んでゆく。