この映画は、とあるバス停で寝泊まりするホームレスの女性が突然襲われてしまうという、日本で実際に起きた悲劇から着想を得ています。この事件により、被害を受けたホームレスの女性を追悼する集会やデモが開かれ、多くの人が参加しました。その集いの中、最も鋭く胸に刺さる言葉がありました。「彼女は、私だ」という言葉です。
非正規雇用や年齢・性別による不安定な就労状況、更にはコロナ禍における世界的パンデミックにより自身が置かれている危機的状況より「自尊心」が故に生じてしまう自助を求められない感情。そんな誰しもが置かれるかもしれない「社会的孤立」を描く、社会問題をテーマとした映画です。
閉塞感が漂い心の余裕がなくなった現代で、身近な存在や他者に想いを寄せることができるのか。「自分でなんとかしなければ」そう思わせてしまうこの社会で、助けを求める声をこれ以上かき消してしまってはならないと我々は考えます。
物語は、一人の女性がある日突然仕事と住む場所を奪われ、路上生活を余儀なくされてしまい「社会的な弱者」になっていってしまう様を描きます。それはもしかしたら「私やアナタ」のような存在であり、いつどこで起きてもおかしくないこと、この世の中の身近な出来事だと思っております。
日本映画が誇るスタッフ・キャストにより「今、これを世の中に発信しなければ」という想いを込めて―。