●震災ボランティアを経て
東日本大震災から10年。岩手県陸前高田市で、返事のこない手紙を受け取り続ける「漂流ポスト 3.11」。野村監督は震災ボランティアを経験。大切な人を亡くし、悲しみを抱えた人々の〝心の拠り所〟として存在する「漂流ポスト」の活動に感銘を受け、2016年から取材を続け映画化を決意。山奥の「森の小舎」で、一人静かに手紙を受け取り続けるご主人の赤川勇治さん。そして被災地の人々の心は―― 。
●佐々部監督が急逝
もともと、陸前高田市をメイン舞台にした劇映画を企画していましたが、初めての劇映画プロデュースゆえ、資金繰りや内容の折り合いが上手くいかず、監督する予定であった佐々部清氏と話し合い一度企画をストップ。しかし、これまでの取材内容を生かしドキュメンタリー映画として再出発。佐々部氏からの応援も受け、野村プロデューサーが初監督として再び企画をスタートした矢先、佐々部清氏が急逝―― 。
漂流ポストのテーマに寄り添いその姿を追おうとしていた者が、一転「手紙を書く」立場の人間になったのです。
●再出発
悲しみに暮れ悩み抜いた結果、自分たちの今の姿を正直に描こうと決め、そして、佐々部監督の盟友、俳優:升毅氏が合流。気鋭の撮影監督:早坂伸氏も共同監督として参加、佐々部組俳優部の伊嵜充則、三浦貴大 、比嘉愛未、中村優一らも出演、岩手、山口、そして鹿児島への旅路を瑞々しい映像美で映し出す。
「亡き人へ手紙を送る」ことの真の姿と、佐々部清が被災地で撮ろうとしていたもの。升毅が自らの孤独と向き合い、「生きること」への答えを探す旅に出るドキュメンタリー。
<漂流ポストとは>
岩手県陸前高田市の「森の小舎」に実在する郵便ポスト。ご主人の赤川勇治さんが、震災遺族の“心にしまわれたままの悲しみ”が「手紙を書く事で癒されれば…」と思い立ち受付を始めた。
亡くなった大切な人への想いを綴り、漂流ポストに手紙を宛てる。やがて震災以外にも同じような気持ちを抱えた人たちに情報が広がり、全国各地から手紙が届くようになる。現在も大切な人を亡くした人々の心の拠り所となっている。